在職老齢年金の見直し論議の件
- 社会保険労務士曽根事務所
- 2019年10月9日
- 読了時間: 3分
今週、在職老齢年金の見直しに関するニュースが頻繁に新聞やネットで取り上げられています。仕事では年金に関わることはほぼないものの、これだけ話題になっていると触れざるを得ないです。
「全世代型社会保障と在職老齢年金の見直し」(10/9(水)YAHOO!JAPANニュース)
そもそも在職老齢年金って何だっけ?という方もいらっしゃるかと思いますが、簡単に言えば「年金をもらえる年齢でも、働いて収入があれば生活に困ってないだろうから年金減らします!」という制度です。一般的な感覚から言えば「せっかく何十年も保険料を払ってきたのにひどい・・・」と思うかもしれませんが、国の建前では公的年金は「貯金」ではなく「保険」なので、老後働けなくなって生活に困るのを防ぐための制度。個人が積立するのとは考え方が違います。ただ、少子高齢化で将来の年金に不安が募り、世代間格差が問題になる中で、年金を「保険」とする考え方自体にも議論のある所でしょう。
さて、どの程度減らされるのか、ざっくりとした内容は以下の通り。
(現在の内容。金額は毎年見直しされます。)
<60歳~64歳>
・年金+賃金 ≦ 28万円 → 減額なし(全額支給)
・年金+賃金 > 28万円 → 28万円超分の半分減額
・年金+賃金 > 47万円 → 上記+47万円超分の全額減額
<65歳~>
・年金+賃金 ≦ 47万円 → 減額なし(全額支給)
・年金+賃金 > 47万円 → 47万円超分の半分減額
※60歳~64歳の老齢厚生年金は、年金支給開始年齢の段階的な引き上げにより、2031年度以降は完全廃止予定。
※減額は老齢厚生年金のみで、いわゆる「一階部分」の老齢基礎年金は減額なし。
※年金だけで既に28万円超の場合、減額計算の基準は賃金のみで見て、28万円以下なら年金と賃金の合算で減額計算。ちなみに、この「年金」は厚生年金のみで基礎年金は含まない。
※年金・賃金ともに月額。実際は、上記の年金は「基本月額」、賃金は「総報酬月額相当額」。細かい内容は省略しているので、正確かつ詳しい内容は日本年金機構HP「在職中の年金」参照。
前置が長くなりましたが、現在検討されている在職老齢年金の見直しは、この「在職老齢年金」の減額されてしまう基準額を47万円超から62万円超に引き上げて年金を減額しないことにより、高齢者の就労を促進しようということです。
ただ、一方で、該当する人の割合が全体の数パーセントと少なく、結果的に企業の役員などの富裕層への優遇策と映り、将来厳しさを増す年金財政を考えて異論が唱えられています。確かに年金のみで考えればそれも一理あると思いますが、少子高齢化や深刻化する人手不足の中で以前よりもシニア層が現役で働き続ける社会に変わってきているのは事実であり、来春からスタートする同一労働同一賃金など社会全体で考えると、年金は年金で満額支給してもよいのではないかとも思います。そのためには、もう一つの大きな課題、高齢者の医療費負担の軽減措置の縮小も同時にしていかないと、若い世代の納得は得られないかもしれません。
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